comala / fujiwara,daisuke trio

Comala.Jaket1.jpg
DKR (DKR 001) 2019

サックスの藤原大輔が、ベースの井野信義とドラムの外山明をメンバーにむかえ2012年より活動している本トリオが、6年の歳月をかけて到達した境地を収録した1stアルバム。本作は、藤原のオリジナル・アルバムとしては「白と黒にある4つの色(2003)」、「Jazzic Anomaly(2004)」から続く 【表象音楽】 と 【インプロビゼーション】 をテーマにしている。それぞれの楽曲は、南米文学の偉人たち、ガルシア・マルケス、ファン・ルルフォ、ロベルト・ボラーニョなどの小説で描かれている情景や登場人物から想起されたメロディーを元に作られた。
スペイン語圏の物語に顕著に現れる土着的な死生観が、幻想と現実のゆらめき(=マジック・リアリズム)として表現されている様は、篠笛や琵琶などで演奏される純粋邦楽にも通じるいわゆる「間」となって本作品の骨格となっている。
現代音楽的でポビュラー音楽の枠組みを超えたメロディーと、ビートやグルーブにさえ固執していないかのような自由なドラミング、そしてすべてを受け入れる奥行きと透明感のあるベースは、南米文学に通じる「あるはずのないものへの尊敬」を介して、リズムの隙間に存在する静寂、呼吸、といった物の有様そのものを表現するかのような静的でありながら温度の高いサウンドを創造し、ドメスティックな土壌に生まれる新しい音楽の可能性を示唆する。
レコーディングおよびミックスのエンジニアには、ジム・オルークや前野健太などとも親交の深いジョー・タリアを迎え、2018年の8月に神保町の試聴室にてライブ・レコーディングされた。カバー・アートは惜しくも解散がアナウンスされたsakanaのギターリスト/イラストレーターの西脇一弘。