re-gions製作記

quartz-head 05がスタートしたのは2006年の5月。場所が高円寺のライブスポット"penguin house"でquartz headとオマールのデュオでした。オマールとは柏を中心に活動しているジャム系セッションバンド"human beat"というグループで知り合い、本場セネガル仕込みのパーカッション・テクニックはもちろんのこと、伝統的歌唱法にとどまらないポップなメロディーセンスがひかるボーカルにも魅力を感じました。

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omar guaindefall / photo by naoaki

幸いなことに、オマールも「アナタのサックスはベリーナイス!ホントネ!」なんてカタコトの日本語で言ってくれて、「ワタシとアナタでレコード作りましょう!」と意気投合し、ようやく実現したセッションでした。
"human beat"で聴いていた彼のボーカルはボブ・マーリーを彷佛とさせるメロディーやメッセージがこめられていて、quartz headとして02のトランス〜アンビエント、01のテクノときて、その時にハマりにハマっていた"rythm & sound"もあいまって次ぎはダブに挑戦してみたかったところだったので、オマールのジャマイカンなボーカルとダブを軸に05をスタートさせたのでした。

quartz headの流儀として、その時々に聴こえてくるメロディーにすべてゆだねてしまうという音楽の作りかたにはオマールはなんの抵抗もなく、むしろ彼自身も音楽を現場で引き出していくタイプのミュージシャンでした。さぐりながら旋律をさがすような態度ではなく、彼がすでに感じとっているものを歌にしているのがよくわかって、「インプロかくあるべし」と勉強させられました。

quartz headとしての3作目で挑戦してみたかったのはレコーディングされたマルチトラックのミキシングを誰か他のアーティストとコラボレートして作業するということでした。ダブ・エンジニアとして活躍しているアーティストのリサーチをすすめている最中に、ドンピシャのタイミングで知り合ったのがicchieでした。

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icchie

長年、聴きそびれていたディジュリドゥ奏者のgoma君のライブ会場で、大阪から東京にきて1年になるicchieも来ていたのでした。O氏の紹介でポツポツと話し始めて2時間はづっとしゃべりっぱなし。phatをやっていた頃から知っていたオーセンティック・スカ・バンド、デタミネーションズでの苦労話しやら、そのあとのbush of ghosts、東京にでてくるときの決意など、色々とこちらの経験ともオーバーラップする人生を送っていて、これからの音楽のあるべき姿とかいったアーティストとしての軸の部分で大いに共感し、その場で05の企画を説明し、参加を打診しました。

レコーディングはまずicchieのスタジオでセッションのベースになるシンセ、リズムマシンでのセッションからスタート。今回はシンセが「神様」ことquartz headのシンボルpro-oneのみ。リズムマシンにはTR-606と導入したばかりの名器TR-808。これにsherman/filterbankを組み合わせ、まずはサックスを吹かずにひたすらグリグリとツマミをいじりたおし、fostexのオープンリールに録音していきました。(技術的な話しになりますが、今回アナログテープの良さをあらためて実感しました。この感覚を言葉にするのは難しいのですが、音の立ち上がってくる様がガシっと「掴む」ようなかんじで、こういう音楽には大きな武器ですね。)
毎日、icchieのスタジオに通って彼のジャマイカン・ミュージックの知識をわけてもらい、レゲエやダブといった音楽のリズムの奥の深さを発見する日々で、それはもう至福のときですね。
ジャズには「2-5-1」とか「循環」とか「ブルース」といったコード進行の伝統的なフォーマットがありますが、レゲエには「リディム」とよばれるリズムのフォーマットがあって、それぞれに名前がついているようです。icchieいわく「これがまたよくできてんねん」といわしめる、キックとスネアとベースとカッティングの絶妙な組み合わせ。2組みのサウンドシステムでおこなわれる仁義なき戦いを勝ち抜いてきた最強のリディムには アーティストのエゴにもうつる個人的な理想といった幻想ではない現実的な存在感や説得力が感じられます。

つづく。

Posted by fujiwara at July 5, 2007 12:29 PM